速度太郎の日記

ことばクリエイター(自称)の松本秀文が作品や雑文を掲載いたします。

泥棒たち

言葉を信じすぎることは罪だろうか

ハンバーグにガーリックソースをかけながら

ふと階段のことを想う

そこには倒れた浮浪者が

田村隆一の詩集を抱えている

段の一つ一つが苦しそうな表情で

固く口を閉ざしている

「死ぬ理由など幾らでもあった」

盗んだものと盗まれたもの

生まれたことに意味はあったのだろうか

トウモロコシにフォークを突き刺して

血まみれの人を背景に食事をする

時限爆弾がどこかで破裂したのか

銀行を襲う必要もなく

欠伸をしながら今日も誰かの何かを盗んでいる

それが日常なんて悲しいのかな

そんなことをボソボソと語り合っては

終電で帰宅して贅沢に空気を吸う

地球上での暮らしの部分として

生きていればそれで問題はない