速度太郎の日記

ことばクリエイター(自称)の松本秀文が作品や雑文を掲載いたします。

2020-01-01から1年間の記事一覧

飛ぶ劇場『ガギグゲゲ妖怪倍々禁』について(ネタバレ注意)

12月4日に一年ぶりに北九州芸術劇場を訪れた。コロナ禍にあって、もう今年は演劇を見る機会がないのではないかと思っていた。まずは、このような状況下で素晴らしい舞台を創造していただいた飛ぶ劇場の皆様に謝意を表したい。 この芝居を貫く大きなテーマは…

雑な気配

くすぐられて からかわれて 他の上でシェーシェー 風の股との接触と 毛の残骸 雲を歩く蟹 浜であなたはあなたを演じて 「ありがとう」と言えたら 輪から抜けて旅館で読書する シチューが美味しくて死ぬ

「私」の制作

「私はあなたではなくあなたでなくもない」 展示されている「私」を見る私 手のひらに「私」がひらいている その開き方は不必要な要素が多く 夜をうまく過ごすことには適していない 空気がにごっている 「コロナ」という文字であなたは あなた自身がどのよう…

clearになる前の町の風景

ぼやけていたものの輪郭が急にはっきりすると幽霊の唇から発される言葉がある「この地上に難解なものなど存在しない」ただ在るということをからだが理解するまで死んだ後でもまだそんなにアホみたいにわからない者がいると聞く白いチョークで死んだひとのか…

夕渦

6割くらい書き進めていたノート そこに自分の醜さを加算する マスクをつけた猫が通過して 人生の半分は既に失われていた 風が吹く 緑が波を真似て 彼岸への手招きをする動物に出会う こともある 公園で幽霊の話をしている子供たちも いつの間にか死んでしま…

爆破の恋

おいしい焼肉屋さんで猫たちが談笑している俺は奴隷として雇われている猫たちに飲み物を聞くハイボールが好きみたいだ「猫なのに素敵だなあ」猫たちは俺の胸倉をつかんで俺たちを「猫のくせに」とてめえは考えた「お前はコンクリート漬けで今日死ぬんだ」あ…

豚小屋

泥で町がつぶれた髙爺は電信柱に刺された格好で死んだみんなからいつもけむたがられ頑固を骨までにじませていた髙爺よあなたはこの世をうらんでいたのだろうか町のひとびとを殺したがっていたのだろうか豚町とそこに生きるひとに「神」とよばれるひとりの乞…

雨猫

あめねこあめとともにおとはあめあめのせんりつぽたんぽたんあめねこあめとともにあめはおとせんりつのあめぽろんぽろんひからびてしんだゆうれいねことなりてまちをつつみあめにとかしてきみょうなおときみのわるいおとあめねこ

MAIGO STATION

Once upon a time 世界と和解するために 詩を捨てた男がいた 巨大な工場で 青い血を流しながら 言葉は傷ついていた そして 伝説が終わる頃 駅には知らない猫が増える 金魚売りのおじさんに 世界の秘密を打ち明けても まるで変化はありゃしない 「透明」とい…

宴のあと

くるぶしにふかくはいりこんだ邪悪なものすぐさますてたいのだが影が犬のふぐりをひきずり空にながれる血の川を見上げて猿の皮でひとがたはひとを真似る歌の中で羽虫たちがむらがって汚染された水誰かが誰かの脳の中で助かる未来の話をしてみる風が吹いてい…

詩人の彼氏 NO MORE POEM

濃厚に接触できない 濃厚なセックスができない キスもダメだとママンに言われたから 舌を抜くような覚悟で あたしは決めたんだ 「詩人の恋人を作ろう」 人生は出来損ないのバラエティ バラバラなバラエティ 曖昧でモコモコしていて ぬいぐるみのクマちゃんは…

劇場について

ひとはひとのかたちをしたままちがういきものとしてこきゅうするわくせいのかたすみできこえるだろうかだれでもないゆうれいはここにいるぼくもきみもはんとうめいでなにもかもがにごりながらふかくすみわたっているあたえられたことばなどなくわたしではな…

死刑宣告

方舟の中の名前のない部屋 本物の猫が言う 「言い訳をしたら死刑」 僕は「生まれてすみません」と言った 翌日僕は首を斬られた

話題を持たない羊

「ねぇ、飢饉ってどんなものなの?」 「ん?」 「ききん」 「知らない」 そんな会話を夜の蛙たちがしている 深淵というものが存在するとすれば そうだここはきっと深淵なのだろう もう知り合いには誰にも会えないし 人間がこの世界に増えた理由を知る神様も …

触れえぬもの

「生」のすべてを捧げても 触れえぬもの それを人は探す 湿疹跡の皮膚を眺めて 星の言語を想像して 心と心の交換が不可能と気付く 「答えが欲しいようね」 季節の内部で崩壊した亀を連れて 遊園地で死んだふりをするような生活 そこに「恋」という文字は潜ん…

爺が「哉」と言うと世界が消えてしまった行方不明の世界のおじさんを探す旅苦しくて死にかけて生き甲斐など存在しないパラシュートで飛び降りた犬はここにはいない「穴」が教えてくれたことすべては幻想で身体は釘で打たれて痛むだけのもの羊と珈琲を飲んで…

2020の詩空

2020年の夜明け西暦の意味も記号に回収されて地上から詩がどんどんはなれてみえなくなる場所まで行ってしまった猫たちは死後の図書館でスフィンクスの傍らにすわって書物たちのささやきをきいている低所得食堂で小銭を数えながら生きる意味の無効化を悟り生…