速度太郎の日記

ことばクリエイター(自称)の松本秀文が作品や雑文を掲載いたします。

『金閣寺』を読む犬の隣で考えたこと

織姫とセックスした後 「おい!」 サッポロ黒ラベルを口に含む 「テメェ、コロスゾ」 コンドームを屑箱に入れる 「コロナがなければ毎日会えるのにね」 太郎が 複数の 次郎が向こうから走ってくる 「睡蓮でオナニーしたことはほんとうにすみませんでした」 …

オンライオン会議

俺がお前が ライオン あなたが彼が彼女が ライオン 崖から落ちて 花の悪 笛を吹きながら ライオンとして 画面上で再会 会いたかったけど 俺は死んだんだ コロナでね 君はすべすべしてて若いし 壁と同化して笑う月の実態 苦手な野菜を いやな顔をしないで食べ…

編集室

詩人が編集室にこもって 素晴らしい詩を書いている 幻想 「寿司をおごれ」 生霊に首を絞められて 俺が生霊かよ 部屋の中では 言葉コンテみたいなものが散らばる 破片が 生きるのか 死ぬのか 春の中で死ぬのか 春の中で 生きるのか テロリズムが支配的な戦車…

コロナの又三郎

「又三郎と云います」 迷い猫が我が家にやって来て いつの間にか日本語を習得していた 「NHKとEテレのおかげです」 俺は独身で趣味は詩くらいしかなく こんなつまらない人間と暮らして楽しいのかを聞いた 「あなたは全然理解できていない」 「え?」 「あな…

夢の食べ方

「上手ですね」紙の下で死んだ犬が言うつまらない犬だ歯車くらいの刺激をあたえて照明をあて続けてこいつを神様みたいにしようキムチ鍋の中に浸かっていたオモニが怒って「ひとの不幸笑うきたないバカモノ」焼肉食べたいひかりの宮殿みたいなとこでかぐや姫…

そうなんです

誰も知らない 山の中で どうやら 死体になってしまった ようだ やばい 早く帰って録画した映画を見たい 闇に抱かれて しくしく泣く 土に馴染めずに コンクリートを懐かしみ 表情のない人たちのことを 楽園にいたように思い出す 死神が 猫として笑う 朝までに…

飛ぶ劇場『ガギグゲゲ妖怪倍々禁』について(ネタバレ注意)

12月4日に一年ぶりに北九州芸術劇場を訪れた。コロナ禍にあって、もう今年は演劇を見る機会がないのではないかと思っていた。まずは、このような状況下で素晴らしい舞台を創造していただいた飛ぶ劇場の皆様に謝意を表したい。 この芝居を貫く大きなテーマは…

雑な気配

くすぐられて からかわれて 他の上でシェーシェー 風の股との接触と 毛の残骸 雲を歩く蟹 浜であなたはあなたを演じて 「ありがとう」と言えたら 輪から抜けて旅館で読書する シチューが美味しくて死ぬ

「私」の制作

「私はあなたではなくあなたでなくもない」 展示されている「私」を見る私 手のひらに「私」がひらいている その開き方は不必要な要素が多く 夜をうまく過ごすことには適していない 空気がにごっている 「コロナ」という文字であなたは あなた自身がどのよう…

clearになる前の町の風景

ぼやけていたものの輪郭が急にはっきりすると幽霊の唇から発される言葉がある「この地上に難解なものなど存在しない」ただ在るということをからだが理解するまで死んだ後でもまだそんなにアホみたいにわからない者がいると聞く白いチョークで死んだひとのか…

夕渦

6割くらい書き進めていたノート そこに自分の醜さを加算する マスクをつけた猫が通過して 人生の半分は既に失われていた 風が吹く 緑が波を真似て 彼岸への手招きをする動物に出会う こともある 公園で幽霊の話をしている子供たちも いつの間にか死んでしま…

爆破の恋

おいしい焼肉屋さんで猫たちが談笑している俺は奴隷として雇われている猫たちに飲み物を聞くハイボールが好きみたいだ「猫なのに素敵だなあ」猫たちは俺の胸倉をつかんで俺たちを「猫のくせに」とてめえは考えた「お前はコンクリート漬けで今日死ぬんだ」あ…

豚小屋

泥で町がつぶれた髙爺は電信柱に刺された格好で死んだみんなからいつもけむたがられ頑固を骨までにじませていた髙爺よあなたはこの世をうらんでいたのだろうか町のひとびとを殺したがっていたのだろうか豚町とそこに生きるひとに「神」とよばれるひとりの乞…

雨猫

あめねこあめとともにおとはあめあめのせんりつぽたんぽたんあめねこあめとともにあめはおとせんりつのあめぽろんぽろんひからびてしんだゆうれいねことなりてまちをつつみあめにとかしてきみょうなおときみのわるいおとあめねこ

MAIGO STATION

Once upon a time 世界と和解するために 詩を捨てた男がいた 巨大な工場で 青い血を流しながら 言葉は傷ついていた そして 伝説が終わる頃 駅には知らない猫が増える 金魚売りのおじさんに 世界の秘密を打ち明けても まるで変化はありゃしない 「透明」とい…

宴のあと

くるぶしにふかくはいりこんだ邪悪なものすぐさますてたいのだが影が犬のふぐりをひきずり空にながれる血の川を見上げて猿の皮でひとがたはひとを真似る歌の中で羽虫たちがむらがって汚染された水誰かが誰かの脳の中で助かる未来の話をしてみる風が吹いてい…

詩人の彼氏 NO MORE POEM

濃厚に接触できない 濃厚なセックスができない キスもダメだとママンに言われたから 舌を抜くような覚悟で あたしは決めたんだ 「詩人の恋人を作ろう」 人生は出来損ないのバラエティ バラバラなバラエティ 曖昧でモコモコしていて ぬいぐるみのクマちゃんは…

劇場について

ひとはひとのかたちをしたままちがういきものとしてこきゅうするわくせいのかたすみできこえるだろうかだれでもないゆうれいはここにいるぼくもきみもはんとうめいでなにもかもがにごりながらふかくすみわたっているあたえられたことばなどなくわたしではな…

死刑宣告

方舟の中の名前のない部屋 本物の猫が言う 「言い訳をしたら死刑」 僕は「生まれてすみません」と言った 翌日僕は首を斬られた

話題を持たない羊

「ねぇ、飢饉ってどんなものなの?」 「ん?」 「ききん」 「知らない」 そんな会話を夜の蛙たちがしている 深淵というものが存在するとすれば そうだここはきっと深淵なのだろう もう知り合いには誰にも会えないし 人間がこの世界に増えた理由を知る神様も …

触れえぬもの

「生」のすべてを捧げても 触れえぬもの それを人は探す 湿疹跡の皮膚を眺めて 星の言語を想像して 心と心の交換が不可能と気付く 「答えが欲しいようね」 季節の内部で崩壊した亀を連れて 遊園地で死んだふりをするような生活 そこに「恋」という文字は潜ん…

爺が「哉」と言うと世界が消えてしまった行方不明の世界のおじさんを探す旅苦しくて死にかけて生き甲斐など存在しないパラシュートで飛び降りた犬はここにはいない「穴」が教えてくれたことすべては幻想で身体は釘で打たれて痛むだけのもの羊と珈琲を飲んで…

2020の詩空

2020年の夜明け西暦の意味も記号に回収されて地上から詩がどんどんはなれてみえなくなる場所まで行ってしまった猫たちは死後の図書館でスフィンクスの傍らにすわって書物たちのささやきをきいている低所得食堂で小銭を数えながら生きる意味の無効化を悟り生…

飛ぶ劇場『ハッピー、ラブリー、ポリティカル』について(ネタバレ注意)

11月22日、飛ぶ劇場の41回目の公演となる表題作の観劇に行った。場所は、北九州芸術劇場の小劇場。私は、小劇場の空間が昔から好きだ。近頃は、演劇は東京で見るか、北九州で見るかのどちらかになり、北九州で見るのはほとんど飛ぶ劇場の舞台である。今回も…

猫の他界

某月某日 猫が死んだ 死んだ猫は詩を書いていた だから死んだのかもしれない 頭蓋骨から脳がはみ出して 全身は血のスープに浮かんでいる 都会が悪いのか 浮浪者が読み漁る古い詩集の色褪せた文字 もういないもういないもういない いつの間に生まれていたのか…

ソナチネ

人が生きるのも死ぬのも自由だ ふざけた顔をした魚の死体を見るために 太陽と海しかない場所で 一人相撲を仕掛けた 手にした銃はいつだって役立タズ 自分の出生の秘密が明かされる場所 あるいは空を焦がすほどの怒りが 諦念の行間ににじんでゆくのが見えるか…

もしも 明日があるなら

久し振りに、官公庁の資料を読んだ。以下が、報道などで争点になった箇所だが、正直に言うとそもそも2000万で足りるのかと考えてしまう。現状の経済状況の延長でいけたと仮定した話で、そもそも資料の執筆者自体が予測された未来には生存していない可能性が…

自分には「生きた」という記憶がない Jの中では「無」の根が伸び続ける 上空の交差点で信号が青に変わるのを待って 「さよなら」という言葉に吹かれている どこまでも青い場所にいるあなたへ 明るい箱の中で未来の地図を広げてみる 猫が背伸びして笑う場面も…

蜥蜴の町

宝石が自らの罪を告白して 輝きを失う時に それを救う最後の方法を発明した男の物語 (欠損と息切れ) 女の腹の内部には不吉な鳥が飛び回り 「籠として生きてきたの」 「未来永劫呪われるだけの人生って」 通りで馬車をひく男の右眼に世界の半分が眠っていて…

低所得食堂

「低所得食堂へようこそ」 太った猫がアジフライを薔薇のように咥えて 低所得者を徹底的に蔑む 未来など貴様らにはないから 「今」という一瞬の時を後悔だけで塗りつぶせ! ガリガリとキャットフードを食べて 安い焼酎で胃を燃焼させて屑箱に捨てる そして平…