速度太郎の日記

ことばクリエイター(自称)の松本秀文が作品や雑文を掲載いたします。

clearになる前の町の風景

ぼやけていたものの

輪郭が急にはっきりすると

幽霊の唇から発される言葉がある

「この地上に難解なものなど存在しない」

ただ在るということを

からだが理解するまで

死んだ後でも

まだそんなにアホみたいに

わからない者がいると聞く

白いチョークで死んだひとのかたちを描いている

児童もいる

かつて炭鉱で栄えた町だ

ペストで滅びてすみません

ぎゃはははははははははははは

「澄みません」とつぶやく幽霊の中に

雪女が隠れていて乳に触れる男は死ぬ

何度も繰り返し死ぬので棺桶屋は眠れない

さみしい町だ

化物退治に向かったひとたちが

ひとのかたちをしていて笑えた

「もう、きっちり妖怪なんだから」

笑う枕の牙で性交の残像を見せるのが

ポルノの町だ

ダンサーたちはトラックで死の山に向かい

鋼鉄の広辞苑で脳がつぶれるまで叩かれた

つまり死んだのです

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「南の島に行きたいのです」

ガラスの真理が青空を見ている

空気の中には詩よりも尊いウイルスの宝庫

うまくやってくれ

風の又三郎はくたびれた尻を抱く

明日の午後には惑星は

灰かな