速度太郎の日記

ことばクリエイター(自称)の松本秀文が作品や雑文を掲載いたします。

2019-01-01から1年間の記事一覧

飛ぶ劇場『ハッピー、ラブリー、ポリティカル』について(ネタバレ注意)

11月22日、飛ぶ劇場の41回目の公演となる表題作の観劇に行った。場所は、北九州芸術劇場の小劇場。私は、小劇場の空間が昔から好きだ。近頃は、演劇は東京で見るか、北九州で見るかのどちらかになり、北九州で見るのはほとんど飛ぶ劇場の舞台である。今回も…

猫の他界

某月某日 猫が死んだ 死んだ猫は詩を書いていた だから死んだのかもしれない 頭蓋骨から脳がはみ出して 全身は血のスープに浮かんでいる 都会が悪いのか 浮浪者が読み漁る古い詩集の色褪せた文字 もういないもういないもういない いつの間に生まれていたのか…

ソナチネ

人が生きるのも死ぬのも自由だ ふざけた顔をした魚の死体を見るために 太陽と海しかない場所で 一人相撲を仕掛けた 手にした銃はいつだって役立タズ 自分の出生の秘密が明かされる場所 あるいは空を焦がすほどの怒りが 諦念の行間ににじんでゆくのが見えるか…

もしも 明日があるなら

久し振りに、官公庁の資料を読んだ。以下が、報道などで争点になった箇所だが、正直に言うとそもそも2000万で足りるのかと考えてしまう。現状の経済状況の延長でいけたと仮定した話で、そもそも資料の執筆者自体が予測された未来には生存していない可能性が…

自分には「生きた」という記憶がない Jの中では「無」の根が伸び続ける 上空の交差点で信号が青に変わるのを待って 「さよなら」という言葉に吹かれている どこまでも青い場所にいるあなたへ 明るい箱の中で未来の地図を広げてみる 猫が背伸びして笑う場面も…

蜥蜴の町

宝石が自らの罪を告白して 輝きを失う時に それを救う最後の方法を発明した男の物語 (欠損と息切れ) 女の腹の内部には不吉な鳥が飛び回り 「籠として生きてきたの」 「未来永劫呪われるだけの人生って」 通りで馬車をひく男の右眼に世界の半分が眠っていて…

低所得食堂

「低所得食堂へようこそ」 太った猫がアジフライを薔薇のように咥えて 低所得者を徹底的に蔑む 未来など貴様らにはないから 「今」という一瞬の時を後悔だけで塗りつぶせ! ガリガリとキャットフードを食べて 安い焼酎で胃を燃焼させて屑箱に捨てる そして平…

宇宙の涯(赤い小屋のある風景

長い手紙を書いていた夏 この世界に存在していないあなたに対して 子供の頃に使っていた鉛筆で文字を綴った 青白い闇の中で蝋燭の貧しさに照らされて 死んだ者たちのことを自分なりに考えている まだ充分ではない だから死ぬことを許されていないのだろう 私…

感情を封じるための性器

感情を封じるため 感情を封じるため あなたに恋する(世界 ちいさないきものたちの歌が聞こえてきて コンビニで食料品を購入する時に泣いてしまう 暗い地下水道を通過する者たちが消えてゆく 未来の意味をうまく解釈できなかったから 黒板に刻んだ小心者たち…

泥棒たち

言葉を信じすぎることは罪だろうか ハンバーグにガーリックソースをかけながら ふと階段のことを想う そこには倒れた浮浪者が 田村隆一の詩集を抱えている 段の一つ一つが苦しそうな表情で 固く口を閉ざしている 「死ぬ理由など幾らでもあった」 盗んだもの…

獏の中

獏の中で 朝起きて 昨夜の夢を思い出している 食べられたのだ 夢の中では 僕が獏を食べている 水道管を伝う水の記憶 自分の思いのままに 輪郭を気にすることなく 生きていけたなら 都会の片隅 病気の猫の視線が 優しいものに拾われる場所 ひとは窓の外を眺め…