速度太郎の日記

ことばクリエイター(自称)の松本秀文が作品や雑文を掲載いたします。

コロナの又三郎

「又三郎と云います」

迷い猫が我が家にやって来て

いつの間にか日本語を習得していた

NHKEテレのおかげです」

俺は独身で趣味は詩くらいしかなく

こんなつまらない人間と暮らして楽しいのかを聞いた

「あなたは全然理解できていない」

「え?」

「あなたは収入も低いし、友達も恋人もいない下等な人間だ」

「猫のくせに生意気言いやがる」

「あ、出ましたね。そういう言説があなたの人間性を規定してるんですよ」

「ああ、そうだよ。だから、一緒に暮らしても仕様がねえだろ」

「いや、あなたがクズであることで私が救われているので大丈夫です」

コロナが落ち着くまでの辛抱と猫は言った

猫はマスクをした状態で俺にシビアな指摘をした

「あ、それからあなたは承認欲求が強いが、そういうのはやめておきなさい」

「え?」

「実力をつけるのです」

コロナが憎い

こんな憎たらしい猫を呼んだコロナが憎い

でも猫がいることでなぜか幸福

「気持ち悪い」