コロナの又三郎
「又三郎と云います」
迷い猫が我が家にやって来て
いつの間にか日本語を習得していた
俺は独身で趣味は詩くらいしかなく
こんなつまらない人間と暮らして楽しいのかを聞いた
「あなたは全然理解できていない」
「え?」
「あなたは収入も低いし、友達も恋人もいない下等な人間だ」
「猫のくせに生意気言いやがる」
「あ、出ましたね。そういう言説があなたの人間性を規定してるんですよ」
「ああ、そうだよ。だから、一緒に暮らしても仕様がねえだろ」
「いや、あなたがクズであることで私が救われているので大丈夫です」
コロナが落ち着くまでの辛抱と猫は言った
猫はマスクをした状態で俺にシビアな指摘をした
「あ、それからあなたは承認欲求が強いが、そういうのはやめておきなさい」
「え?」
「実力をつけるのです」
コロナが憎い
こんな憎たらしい猫を呼んだコロナが憎い
でも猫がいることでなぜか幸福
「気持ち悪い」